砂の城

僕らの作った砂の城は
波にさらわれて
簡単に崩れ去ってしまったけれど
あいつは笑顔で また作ろうねと呟いた

今 僕が一人で立っていても
打ち寄せる波は あの時と全く変わっていない
僕が一人になってしまっても
一定のリズムで 波は打ち寄せる

泣きそうになった

あいつは海が好きで
打ち寄せる波が好きで
冬でも 海辺を二人で歩いた
僕が帰ろうと言うと 必ず
また来ようねと 微笑んだ

なぁ 僕は海に来てる
おまえは来ないのか
また来ようねって 言ったじゃないか
砂の城
今度は波にさらわれない所に作ろうって
約束しただろ
肝心のおまえがいなくて
どうするんだよ

透明なビンに 海水を汲んで
海の中を歩いて行く
靴がぬれるのも ズボンがぬれるのも
気にならなかった

おまえはもう 二度と海には来れないけれど
代わりに僕が海に来るから
ビンに海水を入れて
おまえの墓に供えてやるよ
それが僕の 精一杯の
君への想い

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